(仮)とりかぶ! 03 還元率としんしゃく率

2つの数字が評価額を決める

残余利益方式の算式には、会社の数字ではない「率」が2つ出てきます。

この2つは、第6回会議の時点ではどちらも決まっていません。 第7回会議以降で議論されることになっています。

資料の試算で使われている「還元率8%」「しんしゃく率0.7〜1.0」は、 あくまで検討のための仮定値です。

なぜ決まっていないのか

還元率について、資料は次の論点を挙げています。

非上場の中小企業では、株主と経営者が同一人物であることがほとんどです。 上場会社の株主のように「配当と値上がり益を期待して投資している」のとは立場が違います。 では期待収益率も違うはずで、では何%なのか。簡単に答えの出る問いではありません。

しんしゃく率についても、資料は「還元率の考え方と併せて議論いただきたい」として いるだけで、具体的な水準は示されていません。

試算が示す「誰の株価が上がるのか」

数字が決まっていなくても、資料の試算からは方向性が読み取れます。

国税庁は、令和2年分から5年分の相続税・贈与税の申告から無作為に抽出した 1,378社について、還元率8%・加算期間5年で試算しています。 現行の申告評価額の中央値を100としたときの水準は次のとおりです。

区分 しんしゃく率1.0 0.9 0.8 0.7
全体(1,378社)+28.1%+15.2%+2.3%▲10.4%
大会社(128社)+114.7%+93.2%+71.7%+50.3%
中会社(820社)+40.2%+26.1%+12.1%▲1.9%
小会社(430社)▲1.9%▲12.0%▲21.8%▲31.6%

傾向ははっきりしています。

これは、現行制度で「規模の大きな会社ほど相対的に評価額が安い」とされてきたことの 裏返しです。規模区分を廃止すれば、その分だけ大会社の評価額は上がります。 見直しの狙いがそこにある以上、当然の結果ともいえます。

評価額が下がる会社の割合

同じ試算で、現行の申告評価額以下になる会社の割合も示されています。

区分 しんしゃく率1.0 0.9 0.8 0.7
全体33.1%40.2%48.6%57.3%
大会社16.4%21.1%24.2%28.1%
中会社26.5%33.5%42.2%50.9%
小会社50.7%58.6%67.9%78.4%

しんしゃく率0.8なら小会社の約7割、0.7なら約8割で評価額が下がります。 一方で大会社でも2〜3割の会社は下がります。 結局は個社の資産・収益の状況次第であり、規模だけで決まるわけではありません。

いま何ができるか

率が決まっていない以上、「見直し後の評価額はいくらになる」と確定的に言うことは できません。できるのは次のことです。

  1. 幅で把握しておく — しんしゃく率0.7と1.0で試算すれば、 評価額の振れ幅が分かります。
  2. 方向性を押さえておく — 自社が規模区分のどこに位置し、 収益性が高いか低いかで、上がる側か下がる側かの見当はつきます。
  3. 今後の会議を追う — 還元率としんしゃく率が示された時点で、 話は一気に具体的になります。

試算ツールでは還元率としんしゃく率を自由に変えられます。 同じ会社の数字で率だけを動かし、評価額がどう振れるかを確かめてみてください。

よくある質問

還元率が高いと、評価額は上がりますか、下がりますか。
下がります。還元率は「株主が期待する収益率」であり、これが高いほど差し引かれる 株主資本コストが大きくなって残余利益が小さくなるためです。利益も配当もない会社を 簿価純資産100として試算すると、還元率2%で91、5%で78、10%で62の水準になると 資料は示しています。
しんしゃく率が0.7に決まれば、必ず評価額は下がりますか。
いいえ。試算では、しんしゃく率0.7でも大会社の評価額は現行比で平均5割増となって います。しんしゃく率は最後に掛ける率にすぎず、その前段階の計算(純資産と残余利益)で 現行との差が生じるためです。
試算に使われた「大会社・中会社・小会社」は、見直し後も残りますか。
残りません。見直し案では会社の規模区分は廃止されます。試算で区分ごとに示されて いるのは、現行制度のどの区分に属していた会社が、見直しによってどう変わるかを 比較するためです。
還元率やしんしゃく率はいつ決まりますか。
第6回会議の資料では、第7回会議以降の想定論点とされているだけで、 時期は示されていません。