(仮)とりかぶ! 01 非上場株式の評価とは

上場株式には値段があり、非上場株式にはない

トヨタやソニーのような上場会社の株式は、証券取引所で毎日売り買いされています。 今日いくらなのかは誰でも調べられます。

一方、世の中の会社の大半を占める中小企業の株式は、取引所で売り買いされていません。 こうした株式を税法では「取引相場のない株式」と呼びます。 一般には非上場株式、経営者の立場からは「自社株」と呼ばれるものです。

値段がない。ふだんは困りません。困るのは、相続や贈与が起きたときです。

なぜ値段を付けなければならないのか

相続税は、亡くなった方が持っていた財産の合計額に対してかかります。現金も土地も 株式も、いったん金額に直して足し合わせなければ、税額を計算できません。

現金なら額面どおり。上場株式なら市場価格。では、市場価格のない自社株はいくらか。 ここで「評価」という作業が必要になります。

納税者が自由に決められるわけではありません。各自が好きな金額を付けたら、税負担が バラバラになってしまいます。そこで国税庁は財産評価基本通達という ルールを定め、誰が計算しても同じ答えになるようにしています。

中小企業の事業承継で起きていること

ここで、多くの経営者を悩ませる問題が生じます。

長年利益を積み上げてきた会社ほど、自社株の評価額は高くなります。ところが、 その株式は売ることができません。買い手となる市場がないからです。

結果として、「相続財産の大半が自社株で、評価額は数億円。しかし現金化できないので 相続税を払う現金がない」という状況が起こります。これが中小企業の事業承継で 長く指摘されてきた問題です。

納税資金を確保するために自社株を会社に買い取らせる、事業承継税制の納税猶予を 使うといった対応が取られますが、いずれにせよ出発点は「自社株がいくらと 評価されるか」です。評価方法の見直しが注目されるのは、このためです。

いまの評価方法のしくみ

現行の評価方法は、大きく2つの分岐でできています。

分岐1:誰が取得したか

同じ株式でも、取得した人によって評価方法が変わります。

支配株主にとって株式は「会社そのもの」ですが、少数株主にとっては「配当をもらう 権利」にすぎない。その実態の違いを反映した仕組みです。

分岐2:会社の規模

原則的評価方式の中でも、会社の規模によって使う方法が変わります。

さらに、資産を多く持つ会社や開業して間もない会社などは 「特定の評価会社」として、純資産価額方式で評価することとされています。

その仕組みが、いま見直されようとしている

国税庁の専門家会議では、この評価方法を大きく変える案が検討されています。 柱は次の2つです。

代わりに原則的評価方式となるのが残余利益方式です。 次のコラムで、その中身を見ていきます。

よくある質問

非上場株式の評価額は、自分で決めることはできませんか。
相続税・贈与税の申告では、財産評価基本通達に定める方法で評価します。納税者が 任意に金額を決めることはできません。ただし、通達による評価が著しく不適当と 認められる場合には、別の評価方法が用いられることがあります。
上場株式はどのように評価しますか。
課税時期の終値のほか、課税時期の属する月・その前月・前々月の各月の終値の平均額を 比べ、そのうち最も低い価額で評価します。市場価格があるため、非上場株式のような 複雑な計算は必要ありません。
自社株の評価は誰に頼めばよいですか。
相続税・贈与税の申告を伴う評価は、税理士に依頼するのが一般的です。会社の規模判定、 特定の評価会社に該当するかの判定、各資産の相続税評価額の算定など、判断を要する 論点が多岐にわたるためです。
見直し後は、自社株の評価額は上がりますか、下がりますか。
会社によって異なります。国税庁資料の試算では、規模の小さな会社では評価額が 下がる傾向、規模の大きな会社では上がる傾向が示されています。ただし評価額を 左右する還元率としんしゃく率がまだ決まっていないため、現時点で断定はできません。 詳しくは第3回で扱います。